すべての感覚を刺激するユニバーサルな快適空間  スヌーズレン

 

スヌーズレンは、70年代の半ばのオランダの重度知的障害を対象にした施設で、一種の教育的刺激を与える環境設定方法として始まりました。スヌーズレンの語源は、オランダ語のSnuffelen くんくん匂いを嗅ぐ、Doezelen うとうとするという2つの言葉から出来た造語で、乳児期から持ち合わせている感覚、診る・聞く・触る・嗅ぐといって感覚の刺激による環境のバリアフリーともいえるものです。

これらの経験は常に利用者自身によって選択された「楽しさ」を基盤とするものであり「心身の緊張がほぐれる」「穏やかになる」「コミュニケーションがとりやすくなる」などの療法的効果は付随的に生み出されるものであると考えられます。

スヌーズレンは最初重い障害を持つ人々の施設で使用され始めたものですが、現在では家庭やホテル、学校、病院、成人訓練施設、レジャーセンターといった場所でも使用されています。

 

 

多重な感覚空間とは

人はそれぞれ固有の落ち着く感覚を持っています。障害を持つ子どものそれは時として理解しがたく共有しにくいことがあり、それが彼らの対人関係や社会生活の難しさにつながってしまいます。しかし、障害を持つ子どもにとっても私たちにとっても、心地よいという感覚は特殊なものではありません。キラキラと輝く光、どこからか香る匂い、どこかなつかしいような適度な揺らぎ、自分のペースを取り戻すことのできるようなリズムやメロディー等 人それぞれ好みの感覚は違っていてもどれも原初的な共通に理解することのできる感覚なのです。

スヌーズレンの空間の中には人が心地よいと感じる様々な感覚が散りばめられています。

 

バブルチューブ

 背の高い透明なアクリルの筒の中を水泡がライトアップされ繰り返し上っていきます。次々と変化していく光の色はスイッチボックスを使って自在に変えることができます。大きなバブルチューブの色を自分で変えることができる快感は子どもの積極的な活動と物の仕組みと変化に対する意識を高めることができます。また、スイッチボックスでは水の泡を止めることもできます。リズミカルな流れに思いがけない変化を起こすことで、子どもの新しい気づきを促しコミュニケーションを促すことにもつながります。

光ファイバー

朝日にキラキラと輝く漣のような光の変化は、なぜかぼんやりと見続けてしまう美しさで、それだけでリラックスする人も少なくありません。安全な細い光のチューブは、手に持ったり体に巻きつけたりその上に寝転んだり光を自在に扱う感覚で楽しむことができます。また鏡に映して光に包まれた自分の姿を確認することもできます。

ロンパプロジェクター ディスクローテーター

壁に映し出されるゆっくりと回転する画像は、回っているものを見続けることの心地よさを教えてくれます。ディスクを変えることで部屋の雰囲気を変えることができ、スヌーズレンの空間にバリエーションを持たせることができます。また、天井に映し出される画像はやわらかいマットの上に仰向けに寝転ぶことを促し、床に体の重みを預けることの心地よさや安心して力を抜くことを体感することができます。

 

 

インタラクティブバイブラボールプール

 透明のボールが無数に入り、底からライトアップされるボールプールは、普段エネルギーの発散にボールプールを使っている子どもに対しても体全体が包まれる感覚や光に包まれる感覚など、今まであまり意識することの無かった感覚に気づくチャンスを与えます。また適度な大きさのボールはプールの中での自由な動きを許し、動いても全身が包まれ続ける安心感を体感することができます。全身の感覚に身をゆだねると、普段なら拒否するような刺激がプールの外で起こっていたとしても、平気で過ごすことができたりします。また底部に内蔵したスピーカーから流れる音楽は耳からの情報だけでなく、心地よい振動として体全体を包みます。

 

・人はそれぞれ自分が心地よいと思う感覚においてとても素直です

苦手な環境の中では、行動を起こす前に身構え、少しの刺激に対しても過敏に反応してしまい、環境に対する不適応行動を起こしやすくなります。スヌーズレンは自分の好きな感覚情報を見つけ、その感覚に包まれて過ごすこと常に認められる空間です。心地よい安心感の中で子どもは心を開きこちらの働きかけにも興味を示しやすい素地を育み、結果的にコミュニケーションがとりやすくなります。 

・発見のつながりの中で自分が今まで気づかなかった感覚に触れることができます

  バブルチューブで受け取ることのできるのは光の色、泡の動き(視覚)泡の動きが伝える振動(触覚)パイプに耳を当てたときに聞こえる水の音(聴覚)など様々な感覚情報を同時に持ち合わせています。最初見て楽しむことしかできなかった子供でも、繰り返し好きなものに関わる経過の中で、触ること聞くことなど他の情報に気づき始めます。 

・見るもの聞くもの触るものがあれば安心してその場に居られることに気づきます

  重度の肢体不自由の方の筋緊張が、スヌーズレンの部屋の中では緩むという報告があります。そこに何も無い空間なら、何か興味のあるものを探そうとして緊張を高めてしまいます。しかし無理に見ようとしなくても見るものがそこにあり、心地よい音楽が耳に届きバブルチューブの振動が床から体にかすかに響く。スヌーズレンの感覚情報のちりばめられた空間の中では無理に緊張することなく自分のほしい感覚を受け取ることができるのです。

・入るのも出るのも自由な空間では「もうちょっと」「もう大丈夫」の感覚を確かめることができます

  リラックスするということはそれだけが目的となることもありますが、リラックスして元気になってまた次の課題をがんばりたい時に用いる場合もあります。日常の活動に気が向かない時、イライラして活動に集中できない時、自分自身でクールダウンが必要だと感じた時、自由に出入りできるリセットの空間としても有効に活用することができます。

 

パニックを起こさなくてもすんだ自分 外のものに働きかけることができた自分 自分の心地よいと思うものを認められて共感してもらえたこと 他者とつながった感覚 誰に教えられたわけでもない自分自身で獲得したこれらの事がらは、子どもの自信となりプライドを持って生きていく力となります。

療育者にとっても共にスヌーズレンの部屋で過ごすことで子どもの理解と大丈夫という安心感を持って子どもと接することにつながります。

日常生活の中で我慢することを強いられることが多い障害を持つ子どもたちにとって、街角にスヌーズレンのような自らリセットして元気を取り戻す空間を作ることは非常に有効だと考えます。


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